【チックタック:ふたりのための物語】物語の考察
Tick Tock: A Tale for Two
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チックタックの主な登場人物
- アマリー・ラブン(姉:プレイヤー1側のメインキャラクター)
- レアケ・ラブン(妹:プレイヤー2側のメインキャラクター)
- Kol(レアケが可愛がっていた白いカラス)
あらすじ
ゲームを始めると、ふたりのプレイヤーのもとに古い時計が届く。
まさに今日、その時の時間がデジタル時計に表示されている。
時計と一緒に同封されていた古い新聞記事には、1937年にレアケが失踪した旨を報じた内容が書かれている。
アマリーはレアケが失踪したのは10時半だったと記者に伝えたが、のちに1時間後の12時が正しい時間だったと訂正した。
時計を開いてみると、時計から黒い渦が巻き起こり、ふたりのプレイヤーは時計の中へと吸い込まれてしまった。
どうやらこの時点で、プレイヤーもまた「失踪」してしまっていたようだ。
第1章 1927年
第1章ではアマリーとレアケの身に起こったことを追体験していくことになる。
レアケが失踪したのは1937年だが、全てが始まったのは1927年からだという。
ある日、アマリーはレアケに悪戯を仕掛けた。
手順に従って箱のハンドルを操作すると、びっくり箱が動作する。
この頃からアマリーのプレゼントは悪趣味だったようだ。
根幹にあるのはあくまで純粋な好意で、だからこそアマリーとレアケの間にはボタンの掛け違えが目立つようになっていく。
第2章 1932年
章の前説として、アマリーの感情が露わにされた。
レアケへの強い執着と、レアケの可愛がっている白いカラスKolへの嫉妬が読み取れる。
第2章はアマリーがプレイヤーに送ってきた時計を開発するという内容。
特殊な配列で時計に4種類の石を組み込むと、時間を抽出できる時計が作れるようだ。
三章に移る段階では、アマリーが時計を開発していく中で不穏な実験を繰り返していたことも伺える。
相次ぐ動物の失踪はアマリーが実験に利用したために起こってしまったようだ。
最後まで白いカラスのKolから時間を抽出しなかったのは、全ての行動がレアケのためだったからだと思われる。
第3章 1937年
第3章はアマリーとレアケの最後の話だ。
1937年に失踪したレアケがどのような道筋を辿ったかが明かされる。
アマリーはどんなときでもレアケのことを最優先にする。
レアケの優しい性格のおかげで、時計の中に入った人が出られるようになった。
1932年の段階では駅があった跡地には、時計のシンボルを模したモニュメントが飾られた塔が建っている。
アマリーはレアケに電話をかけた。
「ハロー、レアケ、やっと電話を取ってくれて嬉しいわ。ずっとメッセージをたくさん残していたのよ!待って!あなたがまだ怒っていることは知ってるわ、でもまだ切らないで、知らせたいことがあるの。」
「私が出る前に、あなたが退屈しないよう相手になってくれるモノを作っておいたの。もっと早く伝えておけばよかったんだけど…まあいいわ。」
「ねえ、まだそこにいる?行方不明になったカラスがいるじゃない、あなたがKolという名前を付けたあのカラス、あなたに新しいのを作ってあげたの。上の階にあるから。それに、新しいのはもっと良くなってるわよ、これは不死身なの。」
ラブン時計店の屋根裏部屋には、機械仕掛けのKolが鎮座していた。
檻に名前を付けてあげると、その機械仕掛けは動き出した。
これもまた純粋な好意のプレゼントだ。アマリーの狂気が暴走を始めている。
ラジオでは、アマリーがスイスで時計職人として研鑽を積み帰ってきたこと、介護ホームの住人が失踪したことを伝えている。
ついにアマリーの時計開発は人間を使った実験の段階まで進んでしまったのだろうか。
終章 時計塔の中で
全ての謎を解き終わると、エピローグに入る。
そこではアマリー視点でレアケ失踪の真実、時計の本当の目的が語られる。
「スイスでの長年の働きが、この時計の完成を可能にしたわ。」
「レアケの時計をもう一度確認したけど、しっかり動いていたわ。」
「ガラスのヒビが問題になるなんて、全く思ってもみなかったわ。」
「何年もかけて、私たちのために時間を集めていたんだもの。私たちの生命に加える時間をね。」
「でもその代わりに彼女は時計の中に消えてしまって見つからないの。」
「私の中のレアケの最後の記憶は、彼女の怪訝そうな顔なの。」
「彼女は最初、この時計を欲しがらなかったの。彼女は、私のプレゼントにはもうウンザリだって。」
「だからとにかく彼女にそれを持って行ったの、彼女には私の側にいてもらう必要があったから。」
「彼女には、盗んだ時間のことは言わなかったわ。その時計が私たちを永遠の存在にするということだけは伝えたのだけど。」
時計は時間を集めて自分たちの生命に加えるための装置で、触れた生物の時間を奪う。
アマリーはレアケにこの時計をプレゼントするが、レアケは欲しがらなかった。
どうしても自分の側にレアケに居て欲しいアマリーは、とにかく時計を持っていってもらう。
その後、レアケは失踪した。
時計に整備不良があったためか、時計の中に吸い込まれそのまま音沙汰がない。
ここまで説明されて、【チックタック:ふたりのための物語】はエンドクレジットに入る。
失った人生の時間が表示され、それがアマリーとレアケが人生の時間に追加した時間だったことが判明する。
私たちプレイヤーは、時間を盗んで今日まで生きてきたアマリーによって時間を奪うターゲットとされ、時計を郵送されてきた。
その中で思惑通り時間を奪われてしまった被害者だったようだ。
考察
【チックタック:ふたりのための物語】はアマリーの異常な姉妹愛を描いた脱出ゲームだ。
アマリーはレアケを溺愛しており、永遠に一緒にいたいと願いそのための装置を開発する。
その装置で永遠に生き続けるためには誰かの時間を奪わなければならない。
時計から脱出するまでにかかった時間が、アマリーとレアケの寿命に(おそらく)追加されている。
レアケの消息はわからない。
どうやら時計の中に今でもいるようだが、生きているのか死んでいるのか、出てこられないのか出てこないのか考えるには、情報が足りない。
ゲームの情報からのみでは想像するしか方法がない。
画像撮影のための2週目なのでクリア時間は早め。
アマリー側(プレイヤー1)では「アマリーが彼女の人生に追加した時間」としてプレイ時間が表示されるが、レアケ側(プレイヤー2)では「したであろう時間」となっている。
また、アマリー側では時間が入っていた空瓶がたくさんあったが、レアケ側では空瓶ではなく全て時間が入った瓶になっている。
これはレアケが時間を消費していないことを表している。
推測:チックタック A Tale for Two
レアケが受け取った時計は、ガラスのヒビ割れが悪影響を及ぼし、想定どおり動作しなかった。
本来はレアケの人生の時間を延ばしてくれるはずが、他の人や動物と同じように時計の中に閉じ込められてしまった。
そしてレアケはプレイヤー2側の時計の中のどこかに今もいるのではないだろうか。
プレイヤー2側でクリアした時の「集めた時間が無駄になってしまったのね。」はその時間が使われず、瓶に詰められて溜まっていくからだろう。
塔にある瓶詰めの時間のどれかがレアケの可能性も考えたが、クリアしたタイミングで時間が瓶詰めされ溜まっていくようなので、時計から脱出していないレアケのものはないと思われる。
他人を傷つけるのを嫌がるレアケは他人から時間を奪うのも嫌がり、奪った時間を使わないために時計の外に出てこられないのかもしれない。
作中ではレアケ側では時々生身のKolが飛んでいたりする。
時計の中で1932年からずっと、Kolと一緒に過ごしていると解釈もできる。
ただ、アマリーは「レアケとずっと一緒にいたい」という望みのために、今でも他人から時間を盗み続け、レアケに「望まぬプレゼント」を送り続け、レアケのことを探し続けている。
そう考えれば、全てが始まったと説明される1927年から今日に至るまで延々と、レアケに異常な愛情を注ぎ当人の望まぬプレゼントを送り続けるアマリーという関係が続いていることになる。
レアケを見つけたいという気持ちがあるのは最初の手紙から明らかだが、時間を盗むのをやめていない点から考えて、あわよくば見つけたいと考えているのだろう。
手紙の最後には、「私の妹を見つけたら、私が会いたがっていると伝えてください」とある。